紙屋研究所「あしたのジョー」

 お堅い内容でも長文でも、読み手をねじ伏せるような力強い筆致で漫画や新書のレビューを書き続けている紙屋研究所管理人の紙屋高雪氏。今回紹介するのは高森朝雄(梶原一騎)・ちばてつやの説明不要の名作「あしたのジョー」です。
 このレビューは2005年7月14、15日に掲載したもの。不朽の名作ということでかえって肩の力を抜いたのか、紙屋氏はお遊びで考え付いたであろう企画を書きつけます。

 その名も「『あしたのジョー』の脇キャラたちにいま一言いわせたい」。このレビューを書いた時点で、「あしたのジョー」連載終了から30年以上がたっていたわけですが、それを当時の時代感覚に沿って、「ジョー」の愛すべきキャラクターに一言語ってもらおうというアグレッシブな企画でした。
 個人的には、ジョーのドサ回り時代の同僚の放つ「長谷川京子」というワードにジワジワ来ます。しかし、やはり白眉は朝鮮戦争で非業を背負ってしまった金竜飛じゃないっすかね。


【金竜飛】
 試合前に矢吹丈に生い立ち話をしたのは、私の心理作戦さ。私の計算ではあのとき矢吹丈が瞼を切って血を流さなければ、99.34%の確率で私が勝利していただろう。リングでゲロる満腹ボクサーにまぐれは二度ないよ。いまの日韓問題? 日本側にはまるで戦略も計算もないね。参拝をつらぬくのが毅然としている? ノーノー、子どもだましさ。日本は世界中からチョムチョムに会うだろうね。

 どうでしょう。14年前のレビューなのに、まるでつい最近書いたかのような錯覚を覚えませんでしょうか?w 「いまの日韓問題?」のくだりなあ。当時は小泉首相の靖国参拝問題でしたが、現在は安倍首相による輸出規制問題とさらに外交面で深刻に。
 紙屋氏は金竜飛に日本側の戦略を「子どもだましさ」と喝破させていますが、今や安倍政権は政治上の紛争解決のために貿易をカードに使うという「禁じ手」を犯しています。子どもだまし、ですらないのが日本国民にとって頭痛のタネですわね。

 紙屋氏の「ジョー」の脇キャラを使ったお遊び企画。これだけでも非常に面白いのですが、ここで終わらないのが紙屋氏のサービス精神ってもんですw 矢吹丈の獣というべき潜在能力を引き出した若く美しきプロモーター・白木葉子を「論ず」と題したレビューを載せています。
 こちらはまさに「紙屋節」というべき硬派で、かつかゆいところまで手が届く論調の名文です。ぜひ夏休みに紙屋研究所の膨大なレビュー群を楽しむ入り口になれば幸いと、しがない一ファンは願っておりますw

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