紙屋研究所「Heaven!?」(佐々木倫子)レビュー

 不定期掲載している紙屋研究所レビューの紹介。今回は佐々木倫子原作の漫画「Heaven!?」を取り上げたい。「Heaven!?」と言えば現在、石原さとみ主演で連続ドラマを放送している最中である。
 私もドラマ化にかこつけて、別の拙ブログ「ENGEI-COMIC SHAMROCK」で「Heaven!?」のレビューを書いた。それきっかけで、テレビを見ない私はTVerでドラマを数回分視聴したのだが、先週の第7回から見るのをやめてしまった。
 なぜかは後述するとして、紙屋高雪氏の「Heaven!?」レビューである。

 紙屋氏のレビューはこちら。結論から言えば、氏は既に「動物のお医者さん」「おたんこナース」(原作は小林光恵)で功成り名を遂げていた佐々木に対して「稀代の職人」なる惜しみない賛辞を送っている。
 何を称賛しているかというと、その綿密な取材力。そして取材で得た膨大なネタを「うんちく」として垂れ流すことをせず、登場人物の会話や行動に丹念に落とし込み、一つの物語を紡ぎ上げるという構成力にである。
 紙屋氏の指摘には、私もしごく納得である。てか、紙屋研究所の話をするときはそんなことばかり書いている気がするw 「動物のお医者さん」も、佐々木が取材で得たであろう情報量が膨大だったもんね。動物そのものの特徴や動物病院での日常など、漫画を読んで笑っている中で自然に身に付いていた感じだよなあ。

 で、「Heaven!?」のドラマの話に戻る。なぜ私がドラマを見るのをやめたかと言うと、ちょっと信じがたい情報を知ったからである。
 先週の8月20日に放送した第7話。この回は幻の大女優・久世光代がレストラン「ロワン・ディシー」に訪れたエピソードがメインだったのだが、原作では前後編で描かれた「秋のメニュー」の回も盛り込んでいたらしい。俺が驚愕したのは、5chのテレビドラマ板の「Heaven!?」スレで「『秋のメニュー』の小澤シェフの山籠もりがカットされていた」という書き込みであった。

 「秋のメニュー」での小澤シェフ(演者は段田安則)の山籠もりといえば、原作(第4巻)では後編でまるまる扱ったエピソードではないか。しかも内容も、小澤と対立していたオーナー・黒須(演者は石原)のバイタリティーがこれでもかと佐々木の筆力で描かれて見応えがある。
 その詳細は原作を読んでもらうとして、このエピソードをドラマ化にあたってまるまる削ったこと自体が私には信じがたかった。それってレストランの厨房にたとえれば、食材を半分捨てるに等しいだろう。

 私は第3回から第6回までドラマ版「Heaven!?」を視聴したが、原作を料理したスタッフからは佐々木のような「職人芸」を感じることはなかった。先の「シェフの山籠もりカット」は顕著な例だが、どうも別々に描かれたエピソードをつまみ食い、つぎはぎして1時間ドラマにしてみました…て印象が強い。
 「動物のお医者さん」のドラマ版(朝日系)は、1時間の中で1話完結のエピを約15分ずつ3本放送していた。そのいくつかは動画サイトで見られるが、ドラマオリジナルの演出で原作をそれなりにうまく膨らましていて「Heaven!?」よりもスタッフの技巧を感じた。

 あと「Heaven!?」ドラマ版で辟易するのは、しょっちゅう入れ込まれるプロレスネタである。メイン演出家の木村ひさしがプロレス好きで他の作品でもよくやるらしいが、第5回放送分で伊賀(演者は福士蒼汰)と川合(演者は志尊淳)のお面を被ったプロレスラーもどきが試合するイメージ映像はどうにも寒かった。
 第6回では堤(演者は勝村政信)の前職だった牛丼店のイメージキャラクターが天山広吉で、天山も勝村もしょっちゅう「カモーン!カモーン!」つってたやつとかな。そんなところで実写化のオリジナリティー出すなよと言いたい。

 そんなわけで私は、ドラマで「Heaven!?」に多少なりとも触れた人々には「ぜひ原作を読んでください」と言いたい。紙屋氏がレビューで取り上げた接待の回は単行本2巻で読める。
 この回は広告代理店がビール会社を接待するのだが、内容的にテレビじゃやりにくいかなーと思う。スポンサー批判と受け取られかねないくだりがあるし。案の定ドラマ版では、いまだに接待の回を放送していない。ぜひとも綿密な取材に裏打ちされた、佐々木倫子の独特な世界を漫画で味わっていただきたい。

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